2022W杯観戦記、二十二日目(最終日、2022年12月19日)

決勝トーナメント・決勝

アルゼンチン・フランス(生観戦)

前半。

出だしからかなりのアルゼンチンペース。というか、アルゼンチンの相手CB以外へのマンツー&強度の高い寄せのせいで、疲れの見えるフランスはスペースはないわ、ボールが来ても自由に触らせてもらえないわで、ほぼ詰み。アルゼンチン、まさかの4-3-3(守備は4-4-2?)がこんなに戦術的にフランス相手にハマるとは。で、結局ディ・マリアに対応に行ったデンベレが、いいようにあしらわれてPK献上。当然メッシが決めます。A1-0F

フランスに攻めさせない一方で、アルゼンチンは攻めて攻めて、弾き返されてもデパウル・エンツォ・マクアリステルのトリオが走り回ってセカンドボールをほとんど収めてまた攻める。ロメロとオタメンディの暴れん坊CBコンビも安定していてまるで別人になったかのよう(特にオタメンディ)。

で、フランスもシュートゼロで、やばい、攻めに転じないと!ってプレッシャーをかけに行ったら、メッシの信じられない外逃しのパスが出て、それをアルバレスが受けてマクアリステルにつなぎ、そこからゴール前に流してディマリアが決める。感動的なハートマークの瞬間。ディ・マリア、顔が完全にガン決まってしまっていて怖い。だがそれがディ・マリアというものだ。A2-0F

なんていうか、もうお互い死力を尽くした試合を2~3試合こなして来ているから、なんとなく今まで通りの強度が出ない、っていうのは決勝あるあるの一つですよね、とは思うものの、それにしてもフランスが別人のチームのようになってしまって、この試合は世紀の凡戦として叩かれるんじゃないだろうか。とこの時点では不安に思っておりました。

本田さんの言う通り、デンベレとラビオは後半交代させられるんだろうな、と思って見ていたら。前半41分、テュラムとコロムアニが投入される。下げられるのはデンベレと・・・ジルー!ラビオ残しなのか!一家に一台ベンゼマクラスとまではいかないけれど、町内に一機は欲しいレベルに昇華されたジルーまでも下げるのか!当然不満げなジルー。まあボールが入ってこないから仕方ないのかね。あまり交代の意味を見いだせないまま前半終了。

後半。

相変わらずのアルゼンチンのパワーとフランスのままならなさ。お互い点は決められていないけど、このままの展開で終わるんだろうな、と思っていた私がこの頃にはおりました。

後半20分くらいにディマリア兄さんがアクーニャと交代。これを持ちまして、アルゼンチンは完全に4-4-2にフォーメーションを変更。ワイドに張ってフランスの右サイドを翻弄していた兄さんがいなくなったところで、クンデがようやく息をし始めたように思われました。

で、後半25分過ぎくらいにテオ・エルナンデスがカマヴィンガと、グリーズマンがコマンと交代。えー、結構よかったこの二人を下げるの?と思って見てましたが、今思えばこの交代はアルゼンチンのフォーメーションチェンジを見て、デシャンが勝負に出た瞬間だったのですね。

これでフランスも4-4-2(というか2-4-4みたいな攻め方)になったところから、エムバペ以外の選手も動きが良くなり、テンポよくゴールに迫るようになってきました。

だが安心せよ、今日のアルゼンチンにはロメロとオタメンディがいるんだぜ。見よ、このオタメンディのベテランぶり。とリアルタイムで褒めたたえていたら、コロムアニにかけっこでぶち抜かれて、焦って後ろから相手にファールをかましてくれるのが、僕らのニコラス・オタメンディであります。シティ時代によく見たアレ。2-0のままで素直に終わればいいのに、どこまでも試合を面白くしてくれる快男児・ニコ。

エムバペもよくわかっている男で、ここで決めるPKは相手をよく見て逆重心を取って、のPKではなく、これからこの相手を粉砕する勢いを持ったパワーシュートであります。マルティネスの読みもなんのその、恐ろしい速さのシュートでPKを決め切り、セレブレーションも不要、とボールを拾ってセンターサークルに急ぐ。A2-1F

こうなってくると人間現金なもので、デシャンが勝負に出たあたりで少し活気づいたフランス陣が、めちゃめちゃ勢いづきました。メッシがキープして流れを取り戻そうとすると、その後ろからコマンが襲い掛かってボールを奪い、ラビオに渡す。すると前半あれだけアルゼンチンのマンマーク&プレスにやられまくっていたラビオに対して誰もついておらず、その空白の時間を使ってラビオはエムバペにふわりとボールを提供。そのボールを浮き球のままテュラムとワンツーし、エムバペがボレーでスーパーゴール。なんと追いついてしまいました。ラビオ残しといてよかったんや・・・すごいなデシャン!A2-2F

ここからはかなりオープン、というかフランスがやりたいようにやることができ、それに対してムカついてきた本田さんが本気でアルゼンチンサポーターになられたご様子。興奮しすぎて立ち眩みを起こす本田さんをハラハラしながら見守る実況氏と視聴者。エムバペが1人で持ち込んでシュートを撃てば、今度はメッシのバイタルからの強烈なシュートをロリスが止める。まったく面白くなってきやがった。ナイスファウルだったぜ、ニコ!おれはアルゼンチン推しなんだけどね!おバカ!

後半終了。

延長前半。

眠気と疲れのピークに達してきた私はアクーニャとシャキリを見間違えるようになってしまいました。どっちもガッチリムッチリ。低重心の憎いやつ。

とにかくフランスのかなり前寄りの攻めに対して、アルゼンチンのやんちゃなCBだけだとやっぱり心配なんだよね、ってことでデパウルに替えて稀代のベンチシューター・パレデス様登場。これでアルゼンチンの守備陣はかなり落ち着きを取り戻したように見えました。パレデス様は、オランダ戦みたいにやんちゃさえしなければいい選手ですしね。

フランスもアルゼンチンもお互いに決定機を作り出して、でも決められず、延長前半終了。

延長後半。

3分くらいに、アルゼンチンがボールをボックス内に運んでラウタロがシュート、キーパーセーブのこぼれ球をメッシが押し込んで勝ち越し。A3-2F

これで決まりやー(寝させてくれー)と、誰もが思ったその時。というかフランスのコーナーキック。ファーのエムバペにボールが渡り、エムバペがシュートを撃つと、モンティエルの肘にボールが当たってしまい、ハンドの判定でPK。当然キッカーはエムバペ。同じコースに蹴りこみ、追いつく(寝れない)。何気にハットトリックなのだが、追いつきの興奮の方が凄すぎて、ハットトリックが全然目立ってない。A3-3F

双方PKを意識し、終了寸前にPK要員をピッチに送り出して延長後半終了。こんなにいい試合がPKで終わるのか・・・と私はサッカーの神を恨みましたね。誰だよ、世紀の凡戦とか言ったやつは。

PK戦。先攻はフランス。キーパーは変わらず、ロリスとE・マルティネス。

フランス一人目、エムバペ。相変わらず同じコースに蹴る。さすがにマルティネスもそちらに反応するが、触ることはできても止めることができず。F1-0A

アルゼンチン一人目はメッシ。左寄りの甘いコースにコロコロシュートを打つが、見事に相手の逆重心を突いていて、決まる。F1-1A

フランス二人目、コマン。お互い一人目に確実に決められるキッカーを置くのだから、ここからが本当の勝負。とハラハラしていたら、左へのグラウンダーがコース甘く入り、止められる。F1−1A

アルゼンチン二人目、ディバラ。アルゼンチン推しとしては絶対に決めてもらいたい二本目。と思っていたら、ど真ん中にグラウンダーで決める。凄まじい強心臓。お前が次世代のエースや!と言うにはちと年を取りすぎているが。F1−2A

フランス三人目、チュアメニ。今大会、エムバペを除いて若いキッカーとPKの相性が異常に悪いんだよなーと思っていたら、やはり左サイドに外した。Eマルティネスの舐めプダンス炸裂。F1−2A

これでかなりプレッシャーから解放されたはずのアルゼンチン三人目、パレデス。左に蹴ることを読まれたが、なんとか決まる。F1−3A

外したら負けのフランス四人目、コロムアニ。ど真ん中上に決めるド根性ぶり。F2−3A

アルゼンチン四人目、モンティエル。決めれば勝ち、というPKに奇しくもPK献上のモンティエルとはなかなかドラマチック。PK負けしたら確実に戦犯扱いされるから、というわけでもないだろうけど、冷静に左に流し込んで決める。アルゼンチンの優勝が決定し、非常におごそかにユニフォームを脱ぐモンティエル。なんか奥ゆかしい。

それにしても最後の最後まで先の読めなかったこの試合、マジで後世まで語り継がれることでしょう。スカローニの戦術眼、デシャンの老獪さ、アルゼンチンの勝利に対する貪欲な姿勢、フランスのゲルマン魂(?)、全てが素晴らしかった。本当に素晴らしい試合をありがとうと言いたい!

ちなみに表彰式まで見ましたが、1.エミリアーノ・マルティネス、ゴールデングローブのトロフィーを股間に立て、本物の馬鹿であることが判明し爆笑。2.メッシがワールドカップを掲げることで感動を得るが、謎のローブを着ていたため感動のマイナス査定。3.アグエロが出てきてワールドカップを掲げるシーンに号泣。という心動かされる名シーンが詰まった表彰式でした。エミリアーノはワールドカップトロフィーであのパフォーマンスをすべきだったな。

あーあ終わっちゃった、寂しいな。さて、リーグ戦とCLに切り替えましょう。

以上です。