AI華やかなりし時代でございます。
右を向いてもAIチャット、左を向いてもAIチャットで、とにかくWEBサイト上で何かを聞きたければ、先ずはAIチャットくんとお話したまえ、と言われます。
でも大変なんですよね、AIチャットくんに状況を理解させるのって。こっちの困りごとを入れると、まあ3つくらいの回答を用意して並べてくれるんですけど、こちらの問いが良くないのか、大体外れ。
ていうかコレ、キーワードに対してFAQを流してるだけじゃねえの。AIどこ行ったの、という精度。
こいつら(企業様)もしかして、AIのことを本当に「愛」と勘違いしているんじゃないだろうか。愛だけで何とか事なきを得ようとする、優しい優しい修羅の世界。
というような疑問を脇に押しのけ、私は質問を繰り返す。手を変え品を変え。主格を変えてみたり、名詞の表現を変えたり、「てにをは」に気を付けてみたり。するとようやくAIチャットくんが違った反応を見せる。
「お客様のご質問はXXXについてですね、それではオペレーターに交代してチャットを続けさせていただきます!」
そうかそうか。ありがとう。できれば2往復目くらいで質問者のポンコツぶりに気が付いて、オペレーターの方に交代してもらえればうれしかったかな。オジサンは。ということは言わぬが花。
満を持して、オペレーターX氏、登場。
オペレーターX氏はAI氏とは違い、無駄なやりとりを好みません。明確にコレ。ということを知りたがる。ということで、まず大前提となる私の質問について「いったい何ですか?」とたずねてこられた。
あれ?
オジサン今までAI氏と一生懸命やりとりをして、ようやく正解の質問が出せて、オペレーターX氏につないでもらったのに、AI氏の仕事はつなぐところまで、正解の質問までは引き継いでくれなかった模様。どうなってんだ、おまえらのラインは。
で質問を伝えると「わっかりました」と桂枝雀師匠風に(私の頭の中の妄想で)回答してくれるオペレーターX氏。少々お時間頂きます、というので、まあ待ち時間も一つの有意義な時間よね、とチャット画面の前で待つのだけれど、ウンともスンとも言わねえです。
さすがにPCで仕事をしていても、30分くらい待たされると他にやることも出てくる。待ってね、と言われた以上、変にせっつくのもイヤダ。ということで黙って画面から離れ、トイレに行ったり買い物に出かけたりして、さらに30分ほどが経過してから机に戻ると。
「担当がXからYに変更となりました。よろしくお願いします」
「調査に時間がかかっております、もう少々お待ちください」
X氏退場からのY氏降臨。
なるほど。
まあ確かに、X氏につないでもらってから1時間半くらいかかっており、X氏も私一人にかかりきりになれるほど暇ではなかろう。手の空いたY氏に引き継ぐのは、非常に道理。と従順に待たされ慣れたオジサンも納得。
でもまあこの調子なら。と家族で外にご飯を食べに行くと、店に着く道すがら、「Yです。お待たせしました。コレコレこういう手順でご対応ください」とお返事がきました。こういう時に限って有能なY氏をあてがうお前ら(企業様)を、私は呪う。
まだ飯にもありつけていない私は、店につき、注文をし、ご飯を食べている。その間、Y氏からは「いかがでしょうか」「お困りごとはありませんか」「状況を伺いたいです」と5分おきくらいにメッセージが飛んでくる。
攻めに回ると随分積極的なヘルプデスクなのね、と思った私は「今に至るまでに結構待たされたので、質問した時と状況が変わってます。リアルタイムでの対応が難しいです」と素直に返信してみました。するとY氏から「わっかりました」とのメッセージが。
そこから堀江家の優雅な晩餐の時間が流れます。鳴らないスマホ。消え去ったY氏。ちょっと正直すぎたか。と気まずい思いがしたほどです。はたして俺はモンスター質問者なのだろうか、と。気持ち、箸のスピードも速まったかもしれません。
さあ食べ終わった、帰ろ帰ろ。と帰宅したころにはY氏のことをすっかり忘れている我が家のモンスター質問者。家で世代別ヒットソング特集、みたいな番組を見ていたら、突如メッセージが来てひっくり返りそうになりました。曰く。
「担当者引き継ぎましたZです。よろしくお願いします」
ああY氏帰ったか。私の正直すぎる返信を気にして、すっかり待ちぼうけくだすったY氏。Y氏も忙しいものな。ありがとうY氏、私はあなたの雄姿を忘れない。桂枝雀師だったか。あれX氏は。ああヤヤコシ。よろしくZ氏。
と考えているが早いか、Z氏から次のメッセージが送られてきました。
「本日の営業時間は終了いたしました、また翌日改めましてご対応させて頂きます」
引き継ぎメッセージから5分ほど。Z氏とはずいぶん短いお付き合いでした。ありがとうZ氏、私はあなたの雄姿を忘れない。桂枝雀師匠の雄姿が3人分そろったんですけど、どういうことですか。
事程左様に問題は解決せず、翌日からまた新たなNew-X氏と対峙しなければならないことになり、できればもうやりとりのタイミングを気にしないで済むAI氏に戻してもらえないかなあ、と詮無いことを考えたりしました。
はたして私たちは進化の道を辿っているのでしょうか。