2019年11月22日の日記

半年ほど前、久々に「こころ」を読んでいたら「精神的に向上心のない者はばかだ」とKに言われて、ずいぶんと心に刺さりました。「興奮して立つような奴はばかだ」に次ぐショックだったと言っても過言ではありませんでした。
「向上しなければならない」と思った私はジムに通うようになりましたが、慣れてくると今一つ効果も感じづらくなり、さらなる向上を目指さなければならない、と血眼になって向上への道を探っておりました。
ある日、山手線に乗ってボンヤリと車内のモニターに流れるコンテンツを見ていると、新垣結衣が出てきて、みょうちくりんな輪っかを持ってフィットネスに励む、というゲームのCMが流れてきました。
「そんなバカな」
とその時は思いましたが、どうやら結構人気があって、店頭で売り切れたりアマゾンで転売ヤーが跳梁跋扈したりと話題になりつつある。相変わらずロード・トゥ・向上を探し求める私には、それがどうにも魅力的に映ってきたので、新宿を歩いていた時に奇跡的に店頭に並んでいたものを、天啓とばかりに購入してしまいました。
まあゲームだし、期待しすぎてはいけない。画面も緩い感じだし、インストラクターの名前は「身振り手振り」からのミブリさんとかいうふざけた名前ののっぺらぼうだし。と、まるっきり油断した態度でこのゲームに臨んだわけですが、30分ほどしたところでしょうか、滝のような汗と高鳴る鼓動、激しい呼吸は留まるところを知らず、それでもミブリさんは表情も変えずに、というか表情がないのですが、私にさらなるスクワットを要求してくる。
「輝いてるよ!」
と私を励ましてくれるのですが、私の頭の中では「風前の灯」という言葉がリフレインされておりました。もう無理、と思ってトレーニングを打ち切った後のクールダウンストレッチの甘美なことといったら!非常につらい体験だったのですが、これは向上におけるすごいもの手に入れてしまったかもしれない。と私は内心自らの決断を誇らしく思ったものでした。
ゲームの素晴らしい点として、人に継続する力を与えてくれるようなインターフェースにはなっているので、つらくても一日一回、30分くらいならば継続することがなんとかできました。が、一方で相手が心無いゲームであるがゆえに、時間が経てば経つほど要求してくる内容がハードになってきて、今では、いままでに経験したことのないような筋肉痛で生活そのものが困難になりつつあります。